グラタク乗り場にて

フェズのグラタク乗り場はいつもタクシーが数台は止まっている。セフロー行き以外にも他の町へ行くタクシーがある。ところが今日は1台もいない。どうも夏休みに入ってみんな動きが活発になっているようだ。ましてやフェズが暑すぎて、週末は他の地へ移動する人も多いようだ。こりゃあ、タクシーが来ても私がすぐに乗れるとは限らないな〜って長期戦を覚悟した。
木陰に腰を下ろし周りに目をやったとき、黄色のTシャツの若者がこっちにこいと手招きをした。「私?」「おまえだ。」彼の指の先には1台のグラタクが。グラタクがいざ乗り場に入ってくると、彼は助手席のドアを押さえ込んだ。他の人から取られないようにしてくれている。私のために、彼はセフロー行きのタクシーを確保してくれたのだ。疑問はいっぱい。乗り場でお菓子を売っている彼、セフローへ私が行くことをもう覚えていたのか。彼はなぜ私のために席を取ってくれたのか。なぜ私だけなのか。ただただ呆然とする。「シュクラン」とお礼を言っても、首を横に振りながら戻っていった。
大勢のモロッコ人が1台のタクシーを取り合う。どう考えても私に勝ち目はない。彼のおかげで暑い中待たずに帰れた。驚きと感謝の気持ちでいっぱい。今度会った時にもっときちんとお礼が言いたい。